<ビタミンの話・水溶性ビタミン>

前回のコラムでは脂溶性ビタミンについてお話ししましたが、今回は水溶性ビタミンについてお話しします。

生野菜、温野菜を調理する際の工夫

水溶性ビタミンには、B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、葉酸(B9)、B12、Cがあります。それぞれエネルギー代謝に関わっており、ストレス軽減や皮膚の健康、免疫力アップ、ヘモグロビンやDNAの合成など色々な役割を持っています。

「水に溶ける」性質があるため、調理する際には「逃がさない」工夫が必要です。例えば、長時間水につけておくとビタミンが流れ出てしまい、本来含まれる量を摂れない場合があります。よく言われるのは、淡色野菜(色の薄い野菜)や果物に多く含まれるビタミンCです。

サラダを作る際、野菜を「シャキッ」とさせたいからとしばらく水につけておくのではなく、さっと水洗い程度にすると、ビタミンの損失が少なくてすみます。また、野菜の断面が大きければ大きいほど流れる量が多くなるため、野菜は切ってから洗うより、切る前に洗った方が損失が少ないと言われています。

料理方法でも差が出ます。温野菜を作る際、野菜を茹でると、茹で汁にビタミンが流れます。蒸したり、電子レンジにかけたりした方が、水を使わないので損失が少ないのです。

水に流れてしまったらどうなる?

では、野菜や果物は生で食べなければだめなのか…というと、そうではありません。水に流れると言っても「0」になるわけではありませんし、汁物のように野菜を加熱した汁も飲んでしまえば、ビタミンも一緒にとることができます。

脂溶性ビタミンは、過剰摂取すると逆に身体に悪い影響を及ぼす可能性があると伝えましたが、水溶性ビタミンは余分に摂っても尿として排泄されるので、あまり問題はありません。つまり裏を返せば、身体に良いからといって、サプリメントなどで多く摂っても、必要な量しか使われずに排泄されるため、高いお金を使っても捨ててしまうことになります。

水溶性ビタミンの働きと豊富な食材

水溶性ビタミンの働きと多く含む食材を表にまとめましたので参考にしてください。

ビタミン体の中での働き多く含む食品
ビタミンB1 ・エネルギー代謝に関わる(特に糖質の代謝に関係) ・豚肉(もも・ヒレ)
・そば
・玄米
ビタミンB2 ・エネルギー代謝に関わる(特に脂質の代謝に関係する) ・豚レバー
・ウナギ
・ブリ
・モロヘイヤ
・ホウレン草
・牛乳
・納豆
ナイアシン ・エネルギー代謝に関わる
・アルコールによって失われやすい
・タラコ
・マグロ
・サバ
・トウモロコシ
・エリンギ
パントテン酸 ・エネルギー代謝過程の中心的サポート役(コエンザムA)
・腸内細菌によって合成される
・鶏肉(レバー・むね・もも)
・納豆
・タラコ
・アボカド
・モロヘイヤ
ビタミンB6 ・アミノ酸の再合成に役立つ ・カツオ
・マグロ
・豚肉(ヒレ)
・鶏ささみ
・バナナ
ビオチン ・エネルギー代謝に関わる
・皮膚や粘膜の健康に役立つ
・卵
・サンマ
・タラコ
・ソラ豆
・そば
・玄米
葉酸 ・赤血球の生成に関わる
・胎児の発育に重要な役割を持つ
※熱に弱いのでできるだけ生の食材で
・野菜
・果物
・鶏レバー
ビタミンB12 ・タンパク質の合成やアミノ酸の再合成に役立つ
・赤血球の生成に関わる
・牡蠣
・ホタテ
・アサリ
・シジミ
・サバ
・アジ
ビタミンC ・コラーゲンの合成に関わる
・カルシウム・鉄の吸収を促進する
・皮膚の健康の役立つ
・ストレス緩和
・野菜(淡色野菜・緑黄色野菜)
・果物
・イモ類

表を見ると分かる通り、水溶性ビタミンの多くがエネルギー代謝に関係しています。そのほか、赤血球の生成に関係していたり、カルシウムや鉄の吸収を促進したりと多くの働きを持ちます。葉酸は胎児の発育に関係しており、妊婦に必要な栄養素としても注目されていますが、認知症の予防効果もあると言われています。

多く含まれている食品はビタミンごとに異なりますが、要はいろんなものを食べることが重要なのです。

今回、紹介するのは「お餅で作る豚肉とキノコのおこわ」です。おこわと言えば、もち米を使って作るのでもっちりした食感が好きな人にはたまりません。今回はもち米をわざわざ用意しなくても、うるち米にお餅を入れて炊ける方法を紹介します。

豚肉は水溶性ビタミンのビタミンB1を多く含み、キノコはビタミンDを多く含みます。キノコは今が旬です。腹持ちが良く、冷めてもおいしいおこわは補食にぴったりです。

女子アスリート/管理栄養士・佐藤郁子