前回のコラム「間違ったダイエットが選手生命、一生の健康を脅かす」では、女性の間違ったダイエットによって、女性のからだに一生涯の影響を及ぼすという話をしました。では一体、女性としての適正な体重や体脂肪はどれくらいなのでしょうか。アスリートとしての結果を出すためには体重、体脂肪は少なければ少ない方が良いのか? 女性として、アスリートとして、何を基準としていけばいいのかを考えていきましょう。
体重だけでなく、体組成を計測しましょう
まず、女性にとっての適正体脂肪率は19%以上27%未満、適正BMI(体重kg/身長m×身長mで算出)は18.5以上25未満です。
「体重」を減らせ! と指導されると聞くことがありますが、体脂肪率や体水分量、骨格筋量、骨量などは測定しているでしょうか。体重が減った=体脂肪量が減った、ではありません。筋肉量や骨量が減っているのかもしれませんし、はたまた、むくみがとれて水分が減ったのかもしれません。意外と体重は少ないけど体脂肪量は多かった、なんて「隠れ肥満」の場合も多いのです。
体重を減らせばパフォーマンスが上がるのであれば、おもむろに体脂肪ばかりを敵視するのではなく、栄養不足によってむくんでいないか? 生理前だから単純に体重が増えているだけではないのか? などをチェックしていくことも必要です(生理前は「プロデスゲン」という女性ホルモンの影響で細胞の外液が増え、身体が全体的にむくみます。そのために体重が増加することがありますが、決して体脂肪のせいではありません)。
体脂肪率17%は下回らない!
体脂肪には人間の生存に関わる大きな役割があり、女性ホルモンの分泌を正常に保つ働きも担っています。
体脂肪の役割は
・エネルギーの貯蔵庫
・骨や筋肉、内臓を保護する
・内分泌器官としての役割(女性ホルモンであるエストロゲンの代謝などを行う)
・体温の保持
があります。
アスリートにとって体脂肪が少なすぎると、以下のような問題が起こります(体脂肪率が17%を下回ると排卵が止まってしまう人が半数以上ともいわれています)。
・性ホルモン代謝の乱れ(月経不順、無排卵、不妊を起こしやすい)
・骨に必要な栄養素が不足し、骨の強さやしなやかさが失われ、骨折しやすいからだになる
・免疫力が落ち、思うように練習が継続できない
・疲れがとれにくく、ケガや病気になりやすく、回復しづらい
など。
コンディショニングのための適正体重と体脂肪
成長期のアスリートでは、体重、体脂肪を減らしすぎたため、初経年齢が遅いことがあります。月経不順にもなりやすく、高齢時に骨粗しょう症になる確率も高くなります。逆に初経年齢が早いと、乳ガンになる確率が高くなるという研究結果もあります。
「アスリート」として生活していても、将来病気になる可能性が他の人より高くなったり、病気やケガで、早期に引退せざるを得ない状況になったりしたら、元も子もありません。
「体重」と「体脂肪」を適正に保つことは、継続して質の高い練習を行ったり、本番でベストを尽くすための「コンディショニング管理」に必要です。まずは体組成を計測し、選手のからだを本人や指導者、保護者が把握し、向き合いましょう。
今回は、筋肉量アップに最適、かつ疲れている時や試合の前日にもあっさり食べられる「白菜と豚肉の蒸し煮」のレシピを紹介します。