毎日の食事などで、何気なく繰り返している「噛む」という行為は、アスリートにとってとても重要です。特に成長期には、「よく噛んで、味わって食べる」ことが歯や口の健康だけでなく、筋肉や心の発達にも重要であるといわれています。
また、脳が疲れてきたときにガムを噛むと、精神的な疲労が回復することも、最近の研究で分かってきています。集中力アップのためにガムを噛んでいるアスリートもよく見かけます。
現代の咀嚼回数は弥生時代の6分の1
以前に比べて、軟らかい・食べやすい食材や料理が多くなり、食事にかける時間や咀嚼回数も減っているという興味深い資料があります。
「料理別咀嚼回数ガイド」(風人社)に掲載されている斎藤滋氏ほかの復元食による研究の、1回の食事にかける時間と咀嚼回数のデータです。
◆弥生時代の復元食 3990回(51分)
◆鎌倉時代の復元食 2654回(26分)
◆戦前の復元食 1420回(22分)
◆現代の食事 620回(11分)
現代の食事では、食事時間と咀嚼回数が昔に比べて減っていることが報告されています。
アスリートにとって、よく噛んで食べることはパフォーマンスアップにつながります。噛む回数が増えるとあご、頭部、顔面の筋肉をより多く動かすため、血流がよくなり、脳の活性化を促すことがわかっています。特に朝食はしっかり噛むことで、脳を目覚めさせます。
成長ホルモン促す消化酵素も
噛む回数が増えると、唾液の分泌が多くなります。唾液に含まれる消化酵素は、噛むことで分泌されるため、栄養の吸収率はよく噛んで食べたときの方が効率がよいといえるでしょう。
また、その酵素には成長ホルモンを促すものもあり、噛むことで筋力アップや疲労回復、ケガなどの回復も期待できる可能性もあります。このように、大量のエネルギーを摂取しなければならないアスリートがきちんと食べ物を消化するためには、「噛む」ことが非常に重要です。
さらに唾液には免疫力を上げる抗体が多く含まれているので、風邪をはじめとする感染症予防にも効果が期待できます。
最近では軟らかい食材を使った食事だけではなく、ゼリータイプの飲料や栄養補助食品など、あまり噛まなくても食べられる商品も増えています。固形物は消化に悪く、運動前に摂るとトレーニングがしづらいなどという理由から、普段からゼリータイプの飲料などに頼りすぎてしまうと、消化酵素が減ってしまう可能性もあります。普段から噛める食品を意識して摂り、消化酵素を自分で出せる力をつけましょう。
アスリートとして、普段の食事ではできる限り余裕を持った食事時間を確保し、ゆっくりよく噛んで食べることを心がけてみましょう。あえて、食べ応えのあるものをチョイスすることも大切です。
肉はかたまり肉、雑穀ご飯や玄米入りご飯、食物繊維を多く含む野菜、海藻、キノコ類をうまく取り入れてみてください。中でも、「砂肝」は噛みごたえがあるのでとてもオススメです。「砂肝の柚子胡椒ポン酢」は、ただ茹でて漬けておくだけなので、常備菜としてもお役立ちです。