カトリック信者が大半を占めるイタリアで、クリスマスに次いで、宗教的に大切な行事は「パスクワ」です。復活祭で、英語圏では「イースター」と呼ばれています。

 日本人にはあまりなじみがありませんが、十字架に貼り付けにされたキリストの復活を祝う大切な日で、イタリアでは盛大にお祝いされます。ただし、この日は「春分の日の後、最初の満月の次の日曜日」という決まりがあるため、毎年日にちが変わります。今年のパスクワは4月1日(日)です。

 この日を迎える頃になると、街のお菓子屋さんは、卵をかたどったチョコレートにカラフルなラッピングをしてショーウインドーを飾ります。卵は「復活の象徴」。家族や親せき、友人同士でプレゼントしあいます。子どもたちは、中におもちゃが入った卵型チョコレートをたくさんもらい、ほくほく顔を見せます。

本来は子羊や子ヤギの肉

 パスクワの日に御馳走として食卓に上がるお決まりの料理は、子羊や子ヤギの肉料理です。元々、カトリック信者は、復活祭の前の一定期間(約40日間)を絶食期間(肉を食べない)として精進し、この日は思う存分、肉を食べていたそうです。今でもイタリアの家庭では、子羊や子ヤギをこんがりと焼いて食べています。

パスクワの伝統料理のアレンジ版「鶏むね肉のフリッカセーア」
パスクワの伝統料理のアレンジ版「鶏むね肉のフリッカセーア」

 今回紹介するのは、そんなパスクワの伝統料理、ローマ風の子羊料理のアレンジ版「鶏むね肉のフリッカセーア」です。日本のスーパーでは子羊の肉が手に入りにくいので、アスリート向けの低脂肪なお肉、鶏むね肉を使いました。

 「フリッカセーア」という料理は、ワインで蒸し煮したお肉に、レモンの酸味と卵でとろみをつけて仕上げるものです。さっぱりとして、とても食べやすい一皿です。春の訪れを、ぜひお料理からも味わってみてください。

料理家・山内千夏