陸上の長距離などの選手が走り込みや長距離走の練習をしていると、腹痛が起きることがあります。その予防策の1つとして、運動前にエネルギー補給をする際に消化吸収のよいもの、食物繊維の少ないものを摂ることが挙げられます。
レース中の不調のリスクを軽減、排便もしやすく
食物繊維は小腸で消化・吸収されずに、大腸まで達する成分です。便秘予防をはじめとする整腸効果や血糖値上昇の抑制など、体の健康に深く関与するとして積極的に摂取することが勧められています。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における食物繊維の1日あたりの目標量は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています。
しかし、長距離を走るアスリートがレース前に多く摂ることは推奨されていません。「長距離ランナーや競歩選手にとって、レース前に腸内の繊維量を減らすことはレース中の腸の不快感や不調のリスクを低減させるだけでなく、レース前の数時間の排便をしやすくするという利点もある」という報告があるように、食物繊維が少なく糖質が豊富な食品を選ぶようにしましょう。特にレース前に糖質を筋肉に蓄えるグリコーゲンローディングを行う場合は、レースの3日前から食物繊維の量も意識して実施するとよいでしょう。
「低食物繊維・高糖質」の食品の例
食物繊維の量が1日で10g以下のものを「低食物繊維食」と呼びます。持久系アスリートのレース前の食事や補食としておすすめする「低食物繊維・高糖質」の食品の例を挙げましょう。
●白パン、精製されたシリアル(ライスパフなど)
●加糖乳製品
●白米、パスタ、麺類、ジャガイモ
●食物繊維不使用のフルーツジュース
●砂糖入り飲料(ソーダなど)
●菓子、ゼリー、ジャム、はちみつ
●小麦粉(ケーキ、プリンなど)と砂糖(ゼリーなど)をベースにしたケーキやデザート(ただしドライフルーツや生のフルーツは避ける)
●スポーツ製品(スポーツドリンク、ジェル、菓子など)
この中で特に白米、パスタ、麺類、ジャガイモは加熱調理した後、熱いうちに食べることが推奨されています。冷めてしまうと、小腸で消化できず、大腸まで運ばれてしまうでんぷん(レジスタントスターチ)が生成されてしまうからです。暑い時期に暑い場所で熱いものを食べるのは難しいので、部屋を涼しくする、白米などの量を少なくしてその分、フルーツジュースやゼリーを活用するなど工夫してください。
加えて、食事や補食のメニューに肉、牛乳、チーズ、鶏肉、魚、卵など、タンパク質を多く含む食品を取り入れるとよいとも言われています。
今回は「ブルーベリージャム入り牛乳ゼリー」をご紹介します。ジャムは低繊維質で糖質補給ができ、牛乳からタンパク質やカルシウムも補給できます。
材料を混ぜて冷やすだけ。レース前の1品として、日頃の補食としてもお試しください。
参考文献:
・Louise M. Burke, Asker E. Jeukendrup, Andrew M. Jones & Martin Mooses. Contemporary Nutrition Strategies to Optimize Performance in Distance Runners and Race Walkers. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2019, 29, 117-129