疲労回復、骨強化へこだわる「質」
次に「質」だ。
タンパク質源として肉、魚はもちろんだが、「完全栄養力」として栄養バランスの良い卵を使った料理を増やし、朝食で生卵も自由に食べられるようにしている。
滋養効果の高いヤマイモや、腸内環境を整え、ストレスに強くする発酵食品の利用頻度も高い。みそ汁やぬか漬け、砂糖の代わりには甘酒を使用している。
朝のみそ汁のだしは、鶏ガラを煮詰めたコラーゲンスープ、パンはグルテンフリー。調理に使う小麦粉の量を減らして米粉を利用し、水も、サンゴカルシウムが摂れる浄水器を使うなどの徹底ぶりだ。尾島さんも「できるだけ地元のもの、添加物にも意識」して食材を調達している。
専用の練習場を持たないため、年間200~250日は全国各地へ遠征する。宿泊先での食事はあらかじめ、平山さんがメニューを確認し、足りないものをリクエスト。外食先のリサーチは、小林美穂マネジャー(27)らスタッフの仕事だ。「できるだけ手作りしている食堂を探します」(小林さん)とネット情報では探せないお店を、足を使って確認している。
そんな食生活をしているから、「手術するようなケガ人は、これまでもゼロ」と森川監督。「長距離は過酷。でも、好きで始めたスポーツだから嫌になって欲しくない」と無理はさせない。
ケガをしたら治すために「食べろ」
練習時間は朝1時間強、午後は1時間半と決して長くはないが、疲れて食事量が減る選手には「食べろ、食べろ」と言い続ける。定期的に血液検査をし、数値が低い選手にも「食べろ、食べろ」と声をかける。疲労骨折などで練習量が減ると、どうしても食べる量を減らしたくなるが、「治すのが優先」とし食事量をキープさせる。
「走れないのが選手の最大のストレスだから」と選手の希望に理解を示し、ケガをしても完全別メニューにはせず、可能な範囲で練習にも参加させる。栄養状態が整い、マッサージや治療、そして精神面の安定によって、当初言われた全治期間よりも相当早く、復帰した選手も多くいるという。
体重計ではなく、私服で体形確認
体重管理はしないが、体形は管理するよう選手に伝えている。練習後の午前中は外出着のような「私服」が基本。「ジャージではなく、ウエスト周りがきつい服を着ていれば、太ったら自分で分かるでしょ」(森川監督)と女性の気持ちをくみながら、自己管理をすすめる。
エースの1人でもある筒井咲帆(23)は「コンディションチェックのために、たまに体重計に乗るけど、普段は乗りません」。高校までは朝はパン食だったが、「白米に変えてから腹持ちが良くなった。おじちゃん、おばちゃんのご飯はおいしくてホッとする」と笑顔を見せた。
東京学芸大卒業後、別の実業団チームを経て昨年加入した鈴木翔子(25)は「強いチームは食事制限があると聞いていたので覚悟してたけど、こんなに食べて良いんだと驚いた」と明かす。悩んでいた貧血が改善され、ケガも減った。「以前より明らかに食べているけど、友だちに会うと『やせたね』『絞れたね』と言われる。制限されると過食に走ると思う」と話した。練習もこなせるようになり、昨年は3000mの自己ベストも更新。クイーンズ駅伝初出場にも意欲を見せている。
佛教大時代から森川監督の指導を受け、長らくチームをけん引してきた竹地志帆(29)は「選手として一時的に体を絞っても、長い目で見たら女性としての健康を失ってしまっているかもしれない。ここでは食事に関するストレスはなく、伸び伸び生活できています」と環境の良さをアピールした。
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