全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)が来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。マラソン前日本記録(2時間06分11秒)保持者の設楽悠太(28)らを擁するHondaは上位入賞を狙うため、最終調整に入っている。
所属選手の大半(13人)は、埼玉・狭山市にある独身寮「走一寮」で朝晩の食事をとる。日本長距離界のトップクラスの選手たちはどんな食事をとり、あのスピードとスタミナを養っているのか、話を聞きに行った。
1日3000kcalを想定した献立
<Honda陸上部の選手の1日>
・6時~7時 朝練習
・7時~8時 朝食
・8時半~14時 仕事(昼食は社食)
・15時~17時 本練習
・18時~20時 夕食
献立から調理を請け負うのは関連会社のホンダ開発。栄養士の鷹觜(たかのはし)美雪さん(56)が献立を作り、調理従事者の鈴木和美さん(51)奈良亜弓さん(50)が調理、提供をしている。選手の好みや試合のスケジュールを細かく把握した上で、楽しく食べられる環境作りに日々、努めている。
通常のメニューは、エネルギー量を1日約3000kcal(ご飯300g)とし、朝は約1000kcal、夕食は約1500kcalで計算。主食、主菜、副菜の小鉢2つ、汁物、果物が基本で乳製品がつく日もある。選手はお好みで牛乳や納豆をチョイス。数日置きに出されるレバーのしぐれ煮や大粒の梅干しをトッピングするなどアレンジする。「栄養バランスが良く、食べやすく、食欲の沸くもの」(鷹觜さん)で、野菜多めで揚げ物少なめのラインナップだ。
「みんな残さず食べてくれるので、作りがいがあります」。運動部所属の息子を育てた経験のある鈴木さんは言う。やはりトップ選手ともなると、出されたものは何でもしっかり食べているのは当たり前か…と思いきや、「残食ゼロ」の裏に、巧みな仕掛けがあることが少しずつ分かってきた。
多くの選手は偏食なのになぜ…
実は、選手の多くは「偏食」だ。小川智監督(41)や今堀将司コーチ(34)、選手たちに聞くと、偏食の選手の中に主力も複数人含まれていた。11月の東日本実業団駅伝で6区1位だった原法利(24)も「トマト、キュウリやスイカ、メロンなどウリ科のものが苦手。果物もイチゴ、キウイが苦手」と明かした。
こんなに好き嫌いが多いのに、なぜ、残食ゼロなのか。
次のページ偏食の選手が多いのに残食ゼロの理由…