品数を多くして、いろどり意識
調理は地元仙台の仕出し、宅配弁当の「味の金魂(きんこん)」が委託されてている。薬師堂キャンパスで料理長を務める小松寛二さん(61)は「男子はボリューム重視ですが、女子はなるべく品数を多くして、いろどりにも気を使います。好きなものをなるべく提供してあげたいけど、それだけじゃダメ。バランスのいいメニューを心がけています」。ちなみに人気メニューはカレー、シチュー、焼き肉、トンカツ、鶏の唐揚げ、豚汁だそうだ。野中選手は「野菜もしっかりとりたいので助かっています」と感謝する。
夕食担当の菊地哲平さん(34)は「みなさん『おいしい、おいしい』と言ってくれるのがうれしいです」。なるべく食用油は使わず、肉から出る油を利用するなどヘルシーさにも気を配る。「生徒さんが気持ちよく、ストレスなく食べてくれるのが理想」と、カレーの味も「もう少し辛くなくしてほしい」などのリクエストにも対応する。自主練習をしたい選手は、お弁当で提供してもらい、好きな時間に食べることも可能。アスリートファーストが徹底されている。宮田主将は「もう完璧すぎて要望なんてないです」。規則正しく質の高い食事は体調管理にも好影響をおよぼした。以前は貧血などで体調を崩す選手も多かったが、かなり減ってきたという。
寮は2~3人部屋で、女子サッカー部員は41人が暮らす。とはいえ決してサッカー漬けというわけではない。特進コースに在籍する選手も多く、中でも成績優秀な夏目選手は、すでに早大への推薦入学が決まっている。文武両道を目指す選手にとっても、学住近接は願ったりかなったりだ。
一方で自宅から通う選手は、トレーナーから指導を受け、保護者の協力のもと食生活に気をつけている。FW山崎澪(3年)は「母には野菜を絶対に入れてくれるようお願いしている。毎日肉と魚のメニューを交互に作ってくれるのでありがたいです」。松島の自宅を朝5時半に出る山崎選手は、3年間5時に起きて作ってくれた弁当への感謝も忘れない。
おいしい食事と楽しい会話による相乗効果
OGで元なでしこジャパンのGK曽山加奈子監督(32)は「高校年代はまだ体を作っている段階なので、食事は大事ですね。今までは練習が終わって1、2時間後に夕食をとっていた。枯渇したエネルギーを回復するためにも、バランスのいい食事をすぐにとれるのは望ましいです」。85年の創部以来、チームを見てきた国井精一総監督(68)は「バランスのいい食事はもちろんですが、仲間と食事をする中でサッカーの会話もどんどん楽しんでほしい」とおいしい食事とコミュニケーションの共存による相乗効果も期待した。
昨年の全国総体女王常盤木学園に、6月の県総体決勝で勝利。全国総体では優勝した十文字(東京)に準決勝で1-2と敗れた。野中選手は「ボール回しのレベルがすごく高くて、それに対応する守備が必要だと思った」。夏目選手も「すべてにおいてうまかったし質が高かった」と日本一のレベルを体感し、さらなる成長を誓った。
選手の誰もが「永遠のライバル」と口をそろえる常盤木学園とは、県予選決勝でPK、東北大会決勝は0-1と連敗したが、好勝負を繰り広げてきた。今大会は2年連続初戦敗退と結果を出せていないが、国井総監督は「今年は近年になく力がある。第2期黄金時代が始まるかもしれない」と手応えを感じている。18日には県内の高校1年男子チームと練習試合を行い1-0で勝利するなど、着実に成長を続ける。令和の時代に新たな環境でリニューアルした名門は、完全復活を目指し、1月3日の1回戦(午後1時45分、いぶきの森球技場B)で神戸弘陵(兵庫)と対戦する。【野上伸悟】