「食べてるのに大きくならない」のは食べてないから
「うちの子は食べているのに大きくならない」と不思議がる保護者がいるが、「それは、必要量を食べていないから」と新生さん。食べている、食べていないは主観によるところが大きく、保護者、特に母親からすると食べているように見えても、スポーツをする中高生にとっては全く足りていないことがほとんどだという。
まずは今食べている量を把握すること。自分を知るために、選手は毎日同じ条件で体重を計測すること。その上で思うように大きくならないならば、食べる量が足りていないことを認識することから始める必要がある。
タンパク質だけ過剰に摂っても意味がない
栄養情報への意識が高まると共に、特定の栄養素を気にしすぎる傾向にも、新生さんは警鐘を鳴らす。昨今の「筋トレブーム」で年代問わず、「タンパク質偏重主義」にも拍車がかかっている。
「『とにかくプロテイン!』という人もいるが、摂りすぎても意味がありません」。
食べたものは体の中で分解され、再合成され、吸収されて初めて栄養になる。しかも、色々な栄養素と組み合わさることで、様々な効果が期待できるようになるわけで、そのメカニズムが分からないまま肉とプロテイン飲料を大量にとっても、体脂肪として体に蓄積されるだけだ。
また、「美肌にはコラーゲン」といったうたい文句もあるが、分解された栄養素は血液に運ばれて全身を巡るので、コラーゲンをとったからといって、ピンポイントで顔に作用するわけではない。つまり、サプリメントなどで特定の栄養素だけ大量にとっても、期待する効果が表れないこともある。
「それよりも、まずはご飯、汁物、おかずをしっかり食べること。3食+補食がきっちりとれていれば、タンパク質も炭水化物も十分足りるはずです。ジュニア期は食べる喜びを感じる時期。安易に、プロテインなどが添加されている加工品をとる必要はありません」。
まずはしっかり量を食べられる胃腸を作ること
一方で、謙遜しているのか「うちの子は食べないんです」という保護者もいる。「そんなネガティブな発言を耳にしたら、選手は食べなくなります。食べない選手は強くなれません」。
強い選手が食べているのは間違いなく、食べなければ強くなれないのも明白。食べないのか、食べられないのか、この正月に要因を見つけ、少しずつ食べる量を増やしていくこともトライしてみよう。
ただ、「食べないと強くなれないわよ!」といきなり大盛りにしたところで苦痛になるだけだ。何でも食べられた方がいいが、無理やり食べさせる必要もない。カレーなどに混ぜて気付かぬうちに食べさせる親心もあるが、むしろ、そのものを食べなくなる選手もいるという。
「野菜を全部食べないなら問題があるけど、ホウレン草だけ食べないなら、食べなくていいんです。代用できる食材は他にもあるから」というのが新生さんの考え。「いつか食べられるようになることもある。小さなことをあまり気にせず、今は、しっかり量を食べられる胃腸を作ること」と、しっかり噛んで、消化できる胃腸を育てることを考えることが先だ。