多くの友人や家族に支えられ
試合はできなくとも、野球には触れられる。その機会を友人たちが整えてくれた。州によって事態の深刻さは異なるが、カリフォルニア州は現在、外出禁止令が出されている。国や州の方針に従い、選手たちは球団施設などで集団での練習が出来ない。各自で練習場所を確保して自主トレを行う状況だ。そんな中、秋山は現在拠点とするトレーニング施設を、同い年のツインズ前田健太投手(31)から紹介してもらった。
「ケンタに手助けしてもらったのもそうだし、(施設の)トレーナーの方もそうだし、いろんな人が、いろんな手段を考えてくれている。人の力で支えられているなっていうのは、やっぱり思いましたよね」 午後の空き時間には、ほぼ毎日、家族とテレビ電話。夫人と2人の子供は3月中旬に渡米し、レッズの本拠地オハイオ州シンシナティで生活を始めている。
「顔を見て、ちょっと話すくらい。(3歳と5歳の子供たちは)まだアメリカに来た実感がないんじゃないですかね。(自分が)日本に帰った方が、家族的には楽だったと思う。でも今のところ、元気そうなので安心してます」
家族の渡米と時期を同じくして、アリゾナ州のキャンプ施設が閉鎖となった。いったん帰国する選択肢もあったが、長時間の飛行機移動による感染リスクも考慮。家族が、シンシナティよりも温暖で、練習環境もあるロサンゼルスでのトレーニング継続を理解してくれたおかげで、今も汗を流せている。家族と離れ離れの新生活。みそ汁作りで、改めて実感している。
「毎日作るのって、すごくしんどいなって思います。有り難み、感じてます」
夫人への感謝は、身に染みている。32歳を迎えるシーズンでのメジャー挑戦。周囲のサポートを受け、着実に前進してきた。オープン戦では3月10日までの10試合で打率3割2分1厘の結果を残した。
「(キャンプの)後半どれだけ打てたかなって期待がある中での中断だったので、まだまだでしたね。1年目、フラットに(投手を)見られた分、どうやって対応しようか、夢中になってました。映像で見たより違った投手もいたし、そういうのは、かなり、楽しめました」
この期間をどう過ごすか
ドジャースの左腕プライスら、実績のある投手はまだ調整段階と感じた一方で、マイナー投手の実力の高さに驚いたこともあった。日本時代と比べ、実際の対戦データが少ないことで、純粋に勝負に挑めた。楽しさと同時に、徐々に実戦勘をつかみつつあった中で、開幕が延期となった。
「職を失っている人もいるだろうし、(メジャーの)開幕が遅れるなんて、苦労とかじゃないなって。それよりも、この期間をどうやって生きていくか。周りのおかげで今も、変わらずにやれている」
米国も新型コロナウイルス感染の急速な拡大で日々、緊張感が増している。それでも秋山は、多くのサポートに感謝しながら、たくましく過ごし、来る開幕に備えている。
(2020年4月2日、ニッカンスポーツ・コム掲載)