最年少150セーブは母のおかげ、妻にも感謝

<日本ハム3-6楽天>◇9日◇札幌ドーム

母の日に大投手への扉を、また一つこじ開けた。楽天松井裕樹投手がプロ野球史上最年少の25歳6カ月で、史上16人目の通算150セーブを達成した。DeNA山崎の26歳9カ月を上回り、年少記録を更新。高卒ルーキーだった14年に先発でプロデビュー。2年目の19歳から守護神を張り、驚異的なスピードで勝利球を重ねた。名球会入りの条件となる通算250セーブへ、カウントダウンをスタートさせた。

日本ハム対楽天 9回に登板し、通算150セーブを達成した楽天松井(撮影・佐藤翔太)
日本ハム対楽天 9回に登板し、通算150セーブを達成した楽天松井(撮影・佐藤翔太)

家族を大切にする松井が、母の日に節目を迎えた。ヒーローインタビューでマイクを握り「けがなく野球ができているのは丈夫に産んでくれた母のおかげ。常日頃支えてくれる妻も母になったので、こういう日に達成できたというのは非常に感慨深いです」。母真琴さんには、パジャマを贈った。昨年4月に誕生した長女を守る、妻でタレントの石橋杏奈へも感謝の思いを込めた。

2234日前。15年3月28日、札幌ドーム。19歳の松井が、3者凡退でプロ初セーブを記録した。「覚えてますよ。レイが先発でしたね」。記念球は就任初勝利を挙げた大久保監督へ直接手渡した。「救援でキャリアをやっていくとは、プロに入った時は思っていなかったです」。

桐光学園2年夏の甲子園で1試合22奪三振の記録的快投を披露。大エースを夢見て、入団会見で目指す投手像に「田中将大投手」と答えた。1年目から17試合に先発。階段を歩んだ。

転機は2年目、15年の春季キャンプ。実戦初登板は8回のマウンドだった。チーム事情と素質、特徴を鑑みた大久保監督から「中6日いないより、お前が毎日いてくれないと困る」と抑え転向を告げられた。葛藤や戸惑い。もちろんあった。それでも、チームの力になりたかった。

日本ハム対楽天 通算150セーブを達成し記念ボードを掲げる松井(撮影・黒川智章)
日本ハム対楽天 通算150セーブを達成し記念ボードを掲げる松井(撮影・黒川智章)

守護神は抑えて当たり前。打たれれば勝利が遠のく。入れ違いで海を渡り、今季8年ぶりに復帰した田中将からは「常に同じ自分でいなさい」と背中を押された。「案外引きずるタイプ」と、日々重圧と向き合う中で、支えになった。5日のソフトバンク戦。9回2死から1点差を追いつかれ引き分けた。「すみません」と言葉を発しながらベンチへ下がった。移動日を挟んで7日の日本ハム戦前練習に明るい表情で臨み、リベンジの機会に備えた。

初セーブから2234日。同じく札幌ドームで、3者凡退で締めた。記念球を4勝目を挙げたルーキーの早川から差し出され1度は断るも、受け取り、左ポケットへ。敵味方問わず、ファンから拍手を一身に浴びた。“最年少”“最速”との枕ことばは、いくつもステップにした。名球会入りの条件は250セーブ。道半ばだ。【桑原幹久】

(2021年5月9日、ニッカンスポーツ・コム掲載)