つぶつぶに固まる理由
それではA液をB液に垂らすと、どうして固まるのでしょうか。説明しましょう。
昆布に含まれるねばねば成分、アルギン酸が重曹によって水に溶けやすくなります(アルギン酸ナトリウム)。アルギン酸はジグザグ構造をしている多糖類(食物繊維の一種)で、カルシウムを含む液体に触れると、カルシウムイオンを挟んでゲル状になります(エッグボックス構造)。液体同士が触れた面に反応が起こり、アルギン酸カルシウムの薄い膜ができます。これで、「人工イクラ」と呼ばれるつぶつぶが生まれるのです。
身の回りにいっぱいコピー食品
人工イクラは、本物のイクラの代わりにお店で提供されたり、市販されたりすることもあります。このように別の食品を真似して作られた食品を「コピー食品」と言います。
コピー食品は、実は身の回りにたくさんあります。例えば、コーヒーフレッシュ(ミルクの代わり)、カニカマ(カニの代わり)、人工フカヒレ(フカヒレの代わり)、海藻麺(春雨の代わり)など。アルギン酸ゲルの被膜で包む人工イクラ風なものとしては、ソースや果実のジュレなど、料理やデザートの世界にも広がっています。
このように最先端の技術を駆使して高級な食品を似たような味にし、安価、保存性、低カロリーなどの付加価値を加えた新しい食品が広がっています。「人工」に対する善し悪しはここでは述べませんが、食品加工の技術向上により、私たちの生活は確実に豊かになっています。
食品添加物として応用
人工イクラのベースとなるアルギン酸ナトリウムは、食品添加物に分類されます。パンやインスタントラーメンの食感を良くしたり、乳酸菌飲料やサラダのドレッシングのとろみを安定させたり、人工フカヒレの成型のために使われたりなど、増粘剤、安定剤、ゲル化剤として利用されています。
スーパーで加工食品を購入する際、食品表示を見てください。食品添加物はこのアルギン酸やにがりように天然からできているもの、石油から合成される人工のものもあります。使用に関する安全性は、内閣府食品安全委員会によってリスク評価され、安全なもののみ許可されています。
◆アルギン酸
昆布に含まれるアルギン酸は、昆布にとっても、私たちにとっても良い働きをもたらしてくれます。このねばねば成分のおかげで、昆布は海水の中で外敵から身を守ることができ、私たちの腸内では水溶性食物繊維としてゆっくり消化され、糖質の吸収を緩やかに、血糖値の急上昇を抑えてくれているのです。
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