<キッチンは実験室(25):ジャガイモの科学>
皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。初夏の陽気になってきましたが、今回取り上げるのは春野菜の1つ、「新ジャガイモ」です。
料理によって品種を使い分けるのはなぜ? 水にさらす時とさらさない時があるのは何で? 熱いうちじゃないとつぶせない? そんなジャガイモの謎を科学的に解説します。
つぶすなら熱いうちに
マッシュポテトやポテトサラダなど、ジャガイモをつぶして裏ごしするとき、熱いうちでないとつぶしにくく、食感にも影響することをご存知でしたか? 結論から言うと、冷めてから裏ごしすると、硬くなってつぶしにくいだけでなく、海苔のように粘りが出て舌触りが悪くなってしまうのです。
ジャガイモの主成分はでんぷん。以前、「粉の科学」でも伝えたように、細胞内にあるでんぷんは、火にかけると水を含んで膨らみ、粘りがでるのが特徴です。
加熱によって、細胞と細胞をつなぐ接着剤のような「ペクチン」も一緒に柔らかくなり、細胞同士がゆるんではがれやすくなります。
しかし、冷えて硬くなるとペクチンが冷え固まり、細胞同士ががっちりくっついてしまいます。この状態で無理やりジャガイモをつぶそうと力を加えると、細胞同士はくっついたまま押しつぶされ、粘りのあるでんぷんが細胞の外に出て全体に広がってしまい、舌触りも悪くなってしまうのです。
つまり、ジャガイモをつぶすという行為は、科学的に解釈すると、細胞同士をバラバラにするということで、いかにバラバラにしやすい状態にするかを考えればいいわけです(ペクチンの科学)。