<キッチンは実験室(48):ポップコーンの科学>
皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。前回の「ひなあられの科学」に続き、今回も同じ“爆発”の話として、ポップコーンがふくらむ秘密に迫ります。なぜ、あの硬いトウモロコシからふわふわのポップコーンができるのか、一緒に紐解いていきましょう。
どうやってポップコーンができるのか
まず、どうやってポップコーンができるのか、簡単に見ていきましょう。
中火で熱したフライパンに、油と乾燥したトウモロコシを入れます。数分待つと、トウモロコシが黄色から白っぽくなり、ポンポンと弾け出します。ふたをしてそのまま熱していると、粒がすべて弾けてポップコーンが出来上がるのです。
乾燥トウモロコシ自体は殻が固く、とてもそのままでは食べられません。それが加熱して100℃になった時に、トウモロコシ内部の水分が水蒸気となって膨張。殻が硬いため、水蒸気は外に出ることができず、そのまま熱が加わり続けるとかかる圧力も高くなり、180℃になると約9倍にもなります。
その分水蒸気の体積も増え、ついにここで殻が爆発。その際に蒸気の圧力ででんぷんも押し出され、膨らみます。でんぷんが飛び出す時に大きなすき間もできるため、ふわふわの食感が生み出されます。そのサイズは、元の大きさの40~50倍にもなると言われています。
火山活動と同じ原理、硬い殻がポイント
水蒸気爆発といえば、火山活動でも聞いたことがあるでしょう。地下水がマグマに接触すると、その水は水蒸気となり急激に膨張。周囲を硬い岩で囲まれて密閉されていると、逃げ場のない水蒸気はどんどん内部で圧力を高め、それに耐えきれなくなった岩盤が吹き飛ばされるというものです。ポップコーン作りも原理はそれと同じ。フライパンの中で、小さな水蒸気爆発を起こしているのです。
「ひなあられの科学」では、ポン菓子を作る際に専用の機械(穀類膨張機)で米に圧をかけると伝えましたが、ポップコーンの場合はトウモロコシの皮が硬いため、そんな機械も必要ないのです。
アサリの殻並みの硬い皮を持つ「ポップ種」
ポップコーンの材料はトウモロコシですが、私たちが通常蒸したり、焼いたりして食べているスイートコーンとは品種が異なります。「ポップ種(爆裂種)」と呼ばれるもので、もっと皮が硬いのです。その硬さはかつお節を通り越して、アサリの殻と匹敵するとか。私たちがよく食べるトウモロコシを加熱しても殻から水蒸気が逃げてしまい、内部の圧力は上がらないのです。
ポップ種のトウモロコシは乾燥させても14%程度、水分を含んでいるので、加熱すると水蒸気となって膨張します。またこの種のトウモロコシは、通常のものよりも繊維質が豊富で低カロリー、抗酸化物質を多く含んでいるとも言われています。