<キッチンは実験室(49):圧力鍋の科学>
皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。今回は、便利だけどちょっと扱うのに怖さもある圧力鍋に着目してみましょう。電子器具としては、以前紹介した電子レンジに続く第2弾です。原理が分かり、上手に扱えば、時短調理ができて便利。スポーツや習い事の送り迎えで忙しい保護者の方にはぜひ、圧力鍋を使いこなして欲しいところです。
なぜ短時間の加熱で済むのか
それではまず、圧力鍋の原理について説明していきましょう。なぜ圧力鍋を使うと、短時間で調理できるのかというと、「水蒸気を鍋の中に閉じ込めることにより、沸点を上げて高温で調理できるため」です。
沸点…私たちが学校の授業で習ったのは、水の沸点は100℃ということ。これは、平地でお湯を沸かす場合が前提です。
こんな話を聞いたことがありませんか。「山頂でお米を炊いたら早く沸騰し、かつ芯のあるご飯だった」と。水の沸点は気圧によって多少変化します。山頂は気圧が低いため、沸点が下がり、90℃以下で沸騰したのです。つまり、「気圧が低いと沸騰する温度(沸点)が低くなり、逆に気圧が高くなると沸騰する温度も高くなる」。これを利用したのが、圧力鍋の原理です。
圧力鍋は蓋で内部を密閉する構造のため、火にかけると鍋の中の液体から発生した蒸気が外に出られません。そのため水蒸気のエネルギーが増えて温度が上昇し、圧力も高くなるため、沸点が高くなります。温度が高いと一気に加熱できるため、調理の短縮ができるのです。
沸点が100℃から5℃上がるだけで調理時間はなんと半分に、さらに110℃まで上がると、1/4の時間まで短縮されます。最高温度の120℃度まで到達すると、通常の速度の16倍で調理できる計算になっています。
シュッシュッの音など特徴と構造
次に、圧力鍋の構造や使い方についてです。圧力鍋の特徴の1つに、がっしりとした重さと蓋の上の重りがあります。重りはメーカーによって取り外し可能だったり、蓋と一体になっていたりしますが、実は蓋は完全密閉ではなく、小さな穴が空いており、その上に重りが置かれています。
火にかけると鍋に圧力が均等にかかり、蒸気が小さな穴から重りを押し上げて逃げようとします。さらに鍋の中の圧力が高まると、重りが押し上がり、「シュッ、シュッ」と独特の音がし始めるのです。この重りと水蒸気の圧力(蒸気圧)のバランスも、圧力鍋にとって大切です。
鍋は、圧力が高くなっても耐えられる構造や材質が使われています。また、高圧と低圧の重りを付け替えられたり、調理の用途によって調整できたり、あの独特の音がほとんどしないものなどもあります。