圧力鍋だからこそ可能な調理とメニュー

それでは、圧力鍋で簡単に作れる料理を紹介していきましょう。

骨まで柔らかい魚

サンマの甘露煮など、普通の鍋では弱火で長時間煮ても、骨までホロホロに柔らかくならないものも、圧力鍋を使うと短時間で簡単に作れます。魚の骨はコラーゲンの繊維で作られた網目構造の中にカルシウムの結晶が入り込んでいます。鉄筋コンクリートに例えると、コラーゲンの鉄筋にカルシウムのコンクリートを流し入れて強度を保っているという状態ですが、加熱によってコラーゲンが分解されると、硬さを保てなくなります。

物質の分解は温度が高いほど速やかに起こるため、普通の鍋で長時間加熱しても硬いままだった魚の骨も、圧力鍋の高温調理で短時間で柔らかくなるのです。牛すじの煮込み、豚の角煮、骨まで食べられる魚の煮物なども圧力鍋なら簡単に作れます。骨ごと食べられるのは、カルシウム摂取の点でもうれしいですね。

小豆などの煮豆

小豆や大豆の煮豆なども数時間煮込まず、あっという間に出来上がります。しかも、甘味が強くねっとりとした口触りに。加熱時間が短いため、豆本来の甘さ(糖質)が煮汁に溶け出す量が少ないため豆に甘さが残り、また豆の中に含まれるペクチン(食物繊維)の量も外に溶け出しにくいため、ねっとりとしていると考えられます。

また蒸し野菜なども、食材の水分や栄養素が外に溶け出さず、むしろ食材に水分に与えるとも考えられています。加熱後、自然冷却までの所要時間は通常の1/4、ガス消費量も1/4まで減るというデータもあります。

玄米もふっくりもっちり炊ける

玄米も、圧力鍋ではもっちりとおいしく炊けると言われます。玄米は、米ぬかに覆われているために水を吸いにくく、熱も伝わりにくいのでボソボソしやすいのですが、圧力鍋を使うと、圧力で細胞壁などの組織やでんぷんの結晶構造を壊すため、十分に吸水できるようになり、芯まで熱が伝わるようになります。沸点も高くなるため、米の糊化度が高くなり、甘さやもちもち感もアップ。沸騰時間が長く、鍋の中で激しい対流が起こるため、米一粒ずつがしゃっきりと均一に炊き上がるのです(参考:土鍋で炊くご飯はなぜおいしいの?

茶碗蒸しやプリンも

茶碗蒸しやプリンは「す」が立たずに作れます。普通の蒸し器で作る際は、以前、茶碗蒸しと卵の科学で「す」が立つ(穴が開いてでこぼこしてしまう)ことがありますが、圧力鍋の場合、100℃を超えてから沸騰し、卵の中の水分も気化しないため、「す」が立たないのです。

私が学生時代によく旅していたネパールには、どこのホームステイ先にも圧力鍋がありました。ヒマラヤ山脈など知られるように標高の高い土地(気圧が低い)で、ベジタリアンの文化も混じっているため、主菜に豆(ダール)を使うことが一般的ですが、圧力鍋を使っておいしく調理をしていました。

圧力鍋調理のマイナス点

もちろん、そんな圧力鍋にも弱点があります。

・いろんな食材を一度に同時に加熱するので、煮崩れるものもある
・必要以上に加熱しすぎると、形が壊れるものもある
・加熱途中で蓋を開けて、煮え具合を確認できない
・加熱後も、圧力が下がるまで蓋を開けられない
・加圧後の余熱調理まで見越して加熱時間や調理時間を設定する必要がある
・加熱中に味をつけられない(アク抜き、下ゆで、とろみのあるルウなどは別途調理)

扱い方を間違うと事故の原因にも

加圧のときの「シュッ、シュッ」という音や、急冷して圧を取ろうとする時に起こる爆発音のような音に驚いた方もいるのでしょうか。圧力鍋は、鍋の内部で圧力がかかっているので、使い方を誤れば爆発するような大きな事故もありえます。

過去の事故の8割以上は加熱中に起きた事故ですが、これは使用不備や製造の不具合に原因があるものがほとんどです。具体的には、圧力鍋の蓋がきちんとしまっていなくてそのまま加圧したところ、蓋が外れて中身が飛び散った、自然冷却して圧が下がる前に無理矢理開けてしまったなどの原因が報告されています。

また、豆類をたくさん入れると豆が膨張し、皮が剥がれて圧力鍋のノズルを塞いでしまう、シチューやカレーのルウなどとろみのある粘性の高いものは圧力鍋のノズルを塞いでしまうといったこともあります。

とはいえ、怖がりすぎる必要もありません。今の圧力鍋は、安全設計のもとに作られているので、取り扱い通りに使えば誰でも使いこなすことができます。蓋が完全に閉まり、安全ロックが閉まっていることを確認し、蓋のパッキンをこまめにきれいにしておけば、安心して利用できます。

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