-子どもからメッセージがある。「普段の練習以外に欠かさずにやっていることは何ですか」
イチロー氏 全然大したことじゃないけど、意外とできないです。やっている人、少ないんじゃないかな。やろうと思ったら誰にでもできます。でも、僕のなかで結構、大事なことです。ずっと続けています。体重を量ることです。365日欠かさずです。一番、分かりやすいバロメーターなんですよね。その増減を知っているだけで自分の状態が分かる。1日3回、乗るんです。朝、歯磨きのタイミング。朝、起きたときですね。昼に測るし、食事前と後とかそんな感じで3回乗る。これが一番シンプルで、自分の状態を把握しておくのに大切なことなんです、僕にとっては。でも、意外とやっていないですよ。もちろん、自宅にいればトレーニングを毎日やっています。マシンを使ってやっているんですけど、欠かさずというとソレですね。
現役の時って体重をいかにキープするか。増やせないので、体質的に。難しいんですけどキープすることは何とか、それでもやせちゃうんですけど。ひどいときは遠征先でチーズバーガー4つですからね。お昼。チーズバーガー4つ食べて、ポテトフライ食べてコーラ。これ、昼食です。そうすれば試合中におなか減らないです。試合中におなかが減る状態にしたくない。そのためには、そういう方法しかなかったんです。試合中に食べたりするのが嫌いなので。
食生活はロードではめちゃくちゃでした。体重をキープするために、やせてしまうとどうしても落ちるので、パフォーマンスが。いま、キープするのは簡単です。面白いのは、結構、今日、飲んで食べたとき、部屋に戻って量ると、こんなに行きましたかって数字が出るときあるんですね。でも、朝起きて昼まで何かしていたらほとんど戻っている。つまり、僕の結論は健康な状態をキープするためには、運動はもちろん気持ちよければいいと思うんですけど、やっぱり基礎代謝なんです。これを上げるのが一番です。健康の話をしだすとダメですよね、アスリートとして(笑い)。そういう年齢になってきたんですよ(笑い)。
-今年2月に学生野球資格回復。指導可能だが、どういう思いがあるか
イチロー氏 最近、高校野球をよく見るんです。野球をやっているんですよ。普段、メジャーリーグをよく見る。当然ですけど。メジャーリーグはいま、コンテストをやっているんですよ。どこまで飛ばせるか。野球とは言えないですよね。どうやって点を取るか。そういうふうにはとても見えない。高校野球には、それが詰まっている。面白いですよ。頭を使いますからね。
-日本の野球が詰まっている
イチロー氏 高校野球ね(笑い)。日本のプロ野球、あまりフォローできてないので、分からないです。傾向としてはアメリカの野球にどうしても追随する傾向があります。どうなっていくのか、メジャーリーグ。それを見届けたいのもあります。いま厳しい時代。ファンは野球を見たがっている。コンテストを見たいわけじゃないです。
そういう意味でも、高校野球はめちゃくちゃ面白いです。だからプロに入る前段階の選手たちの野球にすごく興味がある。プロ野球の世界で教える人はいっぱいいる。高校野球、学生野球、そんなにプロの経験者がいないですから。それは是非。しかも、僕はいま、動けるので。一緒にできると思う。なぜ、こうやって(トレーニングを)続けているかというと、もちろん、人間の体の限界を見たい、その一例でしかないですけど、それを見たいのもあるし、いずれ、僕が野球選手だったことを知らない世代が出てくるわけですよね。そのときに調べれば、こういう人かとなると思うんですけど、僕がヨボヨボになって、ウエ~イってなっていたらエッてなるじゃないですか。それは一緒にできてナンボじゃないですか。だから、彼らと一緒に走ったり、投げたり。そういうアプローチは面白いなって。それは、きっと僕にしかできないと思うんですよね。人ができないことにずっと僕はチャレンジしてきたので、今回もそうでありたいと思っています。
-トレーニングの話はここにつながる
イチロー氏 ここにもつながります。
-自ら動いてみせると説得力は増す
イチロー氏 もちろんです。
-近いうち、学生に野球を教える姿を見られるか
イチロー氏 見られると思います。ただね、これも初めての体験なので、どうなるかさっぱり分からないですよ。まず見てみたいですね。まず見たい。だから、1日参加とかはない。何日か見ていたい。それで何かできることがあればという、そんなスタンスです。
-学生は楽しみだ
イチロー氏 それはしてもらっていないと困りますよ(笑い)。じゃないと、多分、呼ばれない。需要があっての世界ですからね、こういうのは。そうありたいですね。僕は野球人として、必要とされる、されなくなったら、死と同じですから。引退は選手としての死の形ではあるんですけど、野球人としてはこれから。僕、野球大好きなので。それは変わりないですから。野球人として、何かお返しできたらなと思っています。(終わり)