塩分や糖質の濃度が低め
一方のハイポトニックとは「低張液」を意味し、塩分や糖質の濃度が低めで、安静時の体液よりも低い浸透圧の飲料のことです。含まれる塩分は0.1%程度、糖質は2%程度と低めで、どちらかといえば、経口補水液に近い濃度です。運動による発汗で体液が薄くなっている時は、水分が腸管で速く吸収されるので、運動中や運動直後の水分補給に向いています。ただし、エネルギーを欲している時は、アイソトニックとの併用、もしくはアイソトニックを飲んだ方がいいでしょう。
塩分濃度が高めな経口補水液
経口補水液は、塩分濃度が0.3%程度と高めで、糖質が低めのものを指します。多量の発汗で喉の渇きを感じ、水分損失が1%(体重が1キロ減るイメージ)となると脱水の前兆。そういった時や、大量の汗をかいて脱水状態になった時に有効です。
水分損失率と脱水諸症状との関係
水分損失1%は脱水の前触れですが、それ以上になるとどのようになるのか、水分損失率によって現れる症状を紹介します。
<水分損失率(対水分)と現れる脱水諸症状との関係>
(健康・栄養科学シリーズ「基礎栄養学」改訂第4版 南江堂より)
●1%=大量の汗、のどの渇き
●2%=強い渇き、めまい、吐き気、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液凝縮、尿量減少、血液濃度上昇
●3%=汗が出なくなる
●4%=全身脱力感、動きの鈍り、皮膚の紅潮化、いらいらする、疲労、感情鈍麻、吐き気、精神不安定、無関心
●6%=手先の震え、ふらつき、熱生抑鬱症、混迷、頭痛、熱性こんぱい、体温上昇、脈拍・呼吸の上昇
●8%=幻覚、呼吸困難、めまい、チアノーゼ、言語不明瞭、疲労困ぱい、精神錯乱
●10~12%=筋けいれん、ロンベルグ徴候(閉眼で平衡失調)、失神、舌の膨張、不眠、循環不全、腎機能不全、血液濃縮および血液減少
●15~17%=皮膚がしなびてくる、飲み込み困難(嚥下不能)、目の前が暗くなる、目がくぼむ、排尿痛、聴力損失、皮膚の感覚鈍化、舌がしびれる、眼瞼硬直
●18%=皮膚のひび割れ、尿生成の停止
●20%=生命の危機、死亡
以上のことから、スポーツ時のドリンク選びは、味や値段、商品イメージではなく、栄養成分表示を良く見て、目的や用途に沿ったものを選ぶことが大切と言えます。成分表示については、メーカーや商品によって単位が1本あたり(500mlなど)のものもありますので、100mlあたりに換算して確認するようにしてください。
どのタイミングで、何を、どれくらい飲めるか分からないときは、アイソトニック、ハイポトニックの両方を持参し、飲み分けるのもおすすめです。もちろん、暑くない時期に1時間以内の運動であれば、水や麦茶でも問題ありません。ただし、何も飲まずに40分以上の運動をしていると、体温が急激に上がって熱中症になりやすいので、必ず水分は補給しましょう。
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