プレー指導に卒論もチェック
小井土監督は筑波大卒業後、大学院で学びながら水戸ホーリーホックでプレーし、指導者としては清水エスパルス、ガンバ大阪などでコーチを経験した。今は筑波大の教員(コーチ学)という立場でもある。
-小井土監督自身、いろんな立場を知るからこそ的確な助言ができるのでは
「プロのトップが求められることも見てきているので、それを要求できるのは自分の強みだと思います。ただ頑張れじゃなくて、お前が行く世界はこういう世界だから、それができるようにならないと食べていけないぞと。身をもって分かっているので。あとはプロコーチじゃなく教員なので、三笘ら学生の卒論をチェックする時間もあるので。教員と学生だからこそできる話もある。ピッチの中だけだったら、なかなかできないこともあるし、そこは教育としてのいいあり方だと思います」
-大学を出てから日本代表を目指すことは遠回りにはならないですか?
「全然遠回りじゃなくて、こういうルートもある。選手にとっては幸せなことだと思います。とは言っても、日本代表になることが人生の目的でもないですから。その先にどういう人生を送るか。4年間でいろんな経験をして、どうやって生きていくんだろうって。選手をやめた後のことを考える時間になっていると思う。そういう意味では、人生を大きく長く見た時に(大学は)すごく有益な時間になっている人の方が多いんじゃないかな。遠回りしたと思う人はあまりいないんじゃないですか」
そして穏やかな表情でこう付け足した。
「(大学は)プロサッカー選手の養成機関じゃなく、人をつくる組織ですから。各大学のカラーもありますが、関わっている指導者の方々は親身になってエネルギーを注いでやっています。リスペクトできる仲間たちですし、いい環境だなと思います」
大学とは、社会に出る前に人としての磨きをかけるモラトリアム(準備期間)にある。学ぶことでより多くの視座を持ち、物事を考察する力もついてくる。そこへ同じ釜の飯を食う仲間や指導者も介在してくる。悩み、もがき、励まし合う。連帯感は強まり、その中で自分はどうあるべきか、定まってくるだろう。心が整えば同時に人間性も高まる。それはサッカーのみならず、人生をも豊かにしてくれるものだ。そういう狙いこそ、大学サッカーが目指すところなのであろう。
かけがえのない4年という時間、そこで得た多くの副産物を手に社会へと飛び出していく。おごらず、衒(てら)わず、それぞれが思うそれぞれの道を突き進んでほしい。【佐藤隆志】
(2019年12月26日、ニッカンスポーツ・コム掲載)